最後にボートに乗ったのは、芦ノ湖上ボートの上からスターマインを打ち上げる羽目になったあの時だ。
そのときの話といったら本当に酷いもんだった。
その話はまたの機会にするとして、今は櫂と櫓の話。
櫂はオールのことで、櫓は和船で船頭さん(船尾にいるのにな)がエンヤートットとやるアレのこと。
船だけど、また粘性でベルヌーイの法則が出てくるような話。
「櫂は三年櫓は三月」という言葉は知っていて、櫂と櫓がどういうものかも知ってるつもり?!でいたため、
能く能く考えることなく生きてきたけど、今日はちょっと思い直した記録。
「櫂は三年櫓は三月」は、それぞれの習得にかかる時間を表した言葉。かいはさんねんろはみつき、と普通に読む。
ほとんど経験がなく、わずかな経験ももはや厭な経験でしかない僕がちらっと考えたところでは...
櫂に関しては、オール漕ぎに三年かかるというのはちょっとかかりすぎじゃあ?
とボート漕ぎの人に怒られそうな事を考え、三年かかるというのはきっと、タライ舟の櫂漕ぎのような複雑な漕ぎ方のことだというところに至る。
櫓に関しては、あんな込み入った物はとても三ヶ月じゃ無理だろうと断定。
むしろ、櫂より櫓のほうが難しくって、櫓は三年櫂は三月の間違いなんじゃねえの。と。
そんな風に考えたのは、櫂が抵抗理論による推進方式に比べ、櫓が揚力理論による推進方式は、断然お利巧さんなテクに見えるからなのです(櫓のほうが断然美しく見えるのもあるけどね)。
前者は水の抵抗を踏み台にして進む方法で、後者は水中で物体が受ける圧力の差を利用して進む方法。
櫓が如何にお利巧テクかというのを簡単に言うなら、飛行機の翼と同じ、ということになる。詳しくはここに良く図解されている。
櫓脚が強い下方向の力を発生するが,櫓腕(ろうで)につけられた櫓縄(ろなわ)によって相殺される.櫓臍(ろべそ)と入れ子で構成されるジョイントは,往復運動の折り返しで,櫓脚の迎え角をもどす動作を可能にする.の下りからその構造の妙が伝わってきます。
長崎大学の水産海事情報学研究室の櫓漕ぎ動画(ページ一番下)を良く見ると、往復運動で手をクイっと返すような動作が入るのが分かる。これが迎え角を戻すという事で、翼と水の関係を正しく修正しているわけだ。
そのものずばりの櫓と櫂というページではもっと算盤を弾いた話と、櫂櫓の歴史が。
ここの記述では、
和船は櫓(ろ)で漕ぎ、ボートは櫂(かい)で漕ぐ。 この一見何でもないようなことが、実は流体力学的にはなかなか面白い。 というのも、これは帆船の横風や逆風帆走(風上に向かってジグザグに走る)の場合と、追風帆走の場合と同じ関係であり、さらには汽船のプロペラと外車(パドルホイール:外国で見受けられる水車のような推進機構をもつもの)の関係にも共通するからである。前者の系列(櫓・横風帆走・プロペラ)は、いずれも飛行機と同じ揚力理論によって推進力を得ているのに対し、後者の系列(櫂・追風帆走・外車)は、そろって抵抗理論によって推進するというように、人力・風力・機械力の区別なく、流体力学的には二つの系列にわけられるところに、科学的に歴史をみることの面白さがある。
がとても興味深い。
とまあ、これくらい面白いわけですが、僕には全く実践と実戦が足りてないので、そういう人のサイトを見る。
GLラボが凄い。
往復運動の手の返しに注目して櫓に改良を加えたりというあたり、只者ではない感じ。
特にこのページの櫓臍の辺りや、櫂と櫓を同時に使う辺りには大興奮。
そこで見つけた実験レポートに、今日の本題、「櫂は三年櫓は三月」ってホントかよ?の答えを発見。
一般に「櫓漕ぎ」は難しい操作と考えられていますが、実際やってみると言葉で説明を聞くよりはるかに簡単です。適当な迎え角をつけて漕ぐのですが、櫓の往復運動の反復点において、「へ」の字形に曲がった櫓は自然に適切な迎え角 をとることができるのです、いわゆる「櫓の返し」の操作が驚くほど滑らかに行われます、「へ」形状は日本の櫓の最大 の特徴で、先人の知恵に驚かされます。
手漕ぎの難易度を表す言い習わしで、昔からの船頭達の間では「櫂(かい)は3月、櫓(ろ)は3日」とも言われている そうです。その後さらに「竿(さお)は3年」と続くのだそうですが‥‥。とにかく櫓は簡単です。
ずぶずぶずぶずぶーーっと心に染み入るお答え!
3日と言われたらもう何も言えません。
櫓は効率が良い推進方式なだけではなく、習得しやすい構造になっているわけですか。
当面実践の機会は無さそうなので、とりあえずは長崎大学にあった櫓論文(ここにある「櫓漕ぎ和船漁舟の船型調査と運動性能に関する研究」)を読んだり、
GLラボの広域層流櫓を検証することにした。
手を動かさないと絶対に分からないことだらけなのをいつも実感、で楽しい。
スタンスを大事に。心に関口宏を。